『もう一つの序章』

この現象が発見されたのは、まったくの偶然といっても言い。
その日、ジュン・スガワ大佐(仮)は査察によって自分の愛機であるストライカーを徴収されてしまい、かわりに送られてきた代機であるコマンダーに不承不承搭乗していた。
「なんだよこれは! ストライカーよりも足回りが良いじゃないか! むしろバトラーと一緒だ! 何で同じアファームド系列で武装が違うってだけで足回りまで違うんだよぉ!」
不満タラタラであった。
ストライカーは機体の平衡バランスが悪い上、スケルトン基部が異なるというのに・・・。

(仮)大佐に代機として回されたコマンダーは指揮官用であるので本来同大佐はこれに乗り換えるはずだったが、執拗にストライカーを乗りつづけていた。 即ち代機として回されたコマンダーはそもそも彼に与えられるはずの機体だったので、どうにも奇妙な話だ。

彼はスペシネフと模擬戦をしつつ、不平を零していた。
そんなに不平を零すならストライカーを乗るの辞めれば良いのに・・・と思うのだが、本人は天性の天の邪鬼性が災いしてか乗るのを辞めようとしないのである。
「おお!?ストライカーじゃ出ないタイミングで攻撃が出やがる!ここもバトラーと一緒だ!」
スペシネフの攻撃を無視して性能を確かめている。
そのせいかライトウェポンが封印されてるにもかかわらずショットガンを使用しようとしている。
「何で弾出ないんだ?いきなり故障品かよぉ!」
次の瞬間、機体の速度が飛躍的に上がった。
「おお!?なんだぁ?」
これはある種の漕ぎ状態と一緒である。
彼が驚いてトリガーを連打するのを辞めたとたん、機体の速度は元に戻った。
同時に計器類に目をやり、初めてライトウェポンが封印されている事に気付いた。
「なんだ封印されてたのか。しかし・・・」
封印が解除された後にショットガンを使用してみる。
「うむ・・・、おい、もう一度ライトウェポンの封印弾を撃って見てくれ!」
再びライトウェポンを封印した状態にする。
その状態でライトウェポンを連打しつつ斜め前に歩き出す。
するとコマンダーは明らかに歩行速度が上がった。
「おいおい加速するぞ。こりゃぁ、バグじゃないのかぁ?昔あったスト漕ぎと同じ位の速さだぜぇ。」
その後、(仮)大佐はLWでも同様の現象が引き起こされる事を確認すると、バトラーで同じ事を行ってみた。
するとバトラーでも同じ現象が起きた。
「ほほぅ、こりゃストライカーでもできるかぁ?」
仮大佐は、セリカ工廠に隠し持っていたパーツ取り専用のストライカーを持ち出して同じ実験を行った。
結果ストライカーではできなかった。
彼が再び不平零したのは言うまでもない。

なお、彼の副官であるノ−リィズム大尉がこの事例をまとめ、報告を行った。
以下にその報告書の要点を記す。



『封印加速化現象』

効果
歩行速度が飛躍的にアップする。

対象機体
コマンダー及びバトラー

現象の発動条件
左右の兵器を封印された状態で斜め前に歩行中、封印されたトリガーを連打


尚、正式に事例を検証したところ、加速自体は弾切れの状態でも確認された。
だが、やはり、速度を一定に保つためには封印されてたほうがいいようである。


〜後日談〜
秋の祭典であるXonXにジュン・スガワ大佐(仮)も参戦する予定であったが、8月上旬に提出されたこの報告がもとでストライカーを隠し持っていた事が発覚。彼にDNAを離反する動きがあったとして更迭された上、洗脳施設と噂されるヒューマニックアカデミーに強制収容されてしまい、参加できなかった。
なお、収容後まもなくヒューマニックアカデミーを脱走したとの噂があり、その時一緒にゼーマン大尉も目撃されたとの情報も在るが真偽のほどは定かではない。
最もゼーマン大尉に至っては、彼に良く似た人物が極秘事項であるはずのF・G現象を公式戦で意図的に引き起こしたとの噂もあるが、彼はOAK隔離病棟に収容されているはずであるので何かの間違いであろう・・・。

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