第三章: シーフ・ザ・シーク
1.嵐とともに
いつもなら虫が恋の歌を奏でる静かな夜、だが今日は違う。
いつになく吹き荒れる風、打ち付ける雨。
いつもは静寂を決め込む森林を蝕むのは、嵐であった。
強烈な風は木々に遮られ渦を巻き、風を遮った木々は上半身をしならせ、枝枝をぶつけ合う。
枝と枝、葉と葉がぶつかり合う度に起こる悲鳴は絶え間なく続く。
木々の足元では雨による重みと突風によってなぎ倒された草草が広がっている。
時折露出する地面は泥と化し、ぬかるんでいた。
こんな夜は虫すらも移動はすまい。
しかし、そんな中を二つの動く影がある。
「大佐ぁ! 本当にこのようなところに隠されてるのですかぁ!」
「こんなに不便なところだから隠せるんだろぅが! 大尉、足元に気をつけろ!」
「うわぁ!」
大尉と呼ばれた影が転ぶ。
「いわんこっちゃない。」
大佐と呼ばれた影は気にもせずに進む。
「待ってくださいよぉ」
大尉は慌てて起き上がり大佐の後に続く。
彼の名はゼーマン大尉、そして大尉を無視して先行するのがジュン・スガワ大佐(仮)だ。
スガワ大佐は、先日、反逆罪を言い渡され、神田方面軍神田支部支部長、及び神田工務店OYAGyZ突撃隊隊長を更迭された上、洗脳施設ヒューマニックアカデミーに収容されていた。
しかし、収容後幾日もしないうちにゼーマン大尉がストライカーを駆り、施設を攻撃。
混乱に乗じてスガワ大佐はゼーマン大尉に助けられ、脱走した。
二人はここ一週間ばかり、山間部に潜み、人目を避けながらとあるポイントを目指していた。
無論そのポイントを知っているのは(仮)大佐であり、ゼーマン大尉は従属する形となっている。
ちなみに(仮)大佐を救出するときに使用したストライカーは、混乱させるためにオート操縦にして放ったため、今はもうない。
ほどなくして二人は目的の地点に到着した。
「ようやく、着いたな。更迭されなければこんなに苦労しなくてすんだのだが・・・。」
「大佐、これが・・・。」
ゼーマン大尉は言葉を失った。
木々に隠れるようにVRが二体横たわっており、その上に巨大な迷彩シートが被さっていた。
「よくもまぁ・・・こんな。」
「さぁ、大尉、もう一仕事だ。」
二人はシートを外しに掛かった。
2.横たわる巨兵
嵐の中、何とかシート半分を外すことができた二人は横たわる機体を見据えた。
「こいつは今回の作戦のためだけにチューンナップした特注機だ。」
「いったいいつからここに?」
「更迭される少し前だ。私は二週間前には準備をしておくんだ。おかげで間に合ったがな。」
「いったい何に間に合ったと?」
「それはおいおい話す。とりあえず夜営する。」
翌日、嵐が過ぎ去り、澄んだ青空に輝く太陽が添えられた。
久しぶりにゆったりとした朝を迎えた二人は早速作業に移った。
機体は横たわっており、武装は外されている。
機体の横にあるコンテナから武器を出し、装備させるのだ。
機体は二機、整備基地と違いハンガーなどといったものもなければ機材もない。
いったいどうやって整備するのかと大尉が問うと、とんでもないことをさらっと言ってのけた。
「おまえが片方のVRに乗り込み、同調して片方の機体を組み上げるんだよ。」
「そ・そんな!?」
「いいからやってみろ、特注機だと、言ったろ?」
「りょ・了解。」
不承不承大尉は機体に乗り込んだ。
VRは元々細かい仕事をするために作られたわけではない。
そのため行動は簡略化されている。
例えば銃を撃つとすれば、構えてから指がトリガーを引くという動作が一つの行動として一体になっている。
かといって細かい動作ができないわけではない。
やろうと思えばピアノだってバイオリンだって弾ける。
流石に笛は吹けないとは思うが、やろうと思えば人間のできることなら大抵やってしまう。
むろん、VRによっては手の無いのもいるし、人格同様個性もあり、得手不得手もある。
ただ、それら細かい動作を行おうとすれば、前提としてパイロットがVRに同調しなければならない。
つまり、MSBSをフル活用して一体化しなければならない。
これは下手をするとパイロットの精紳が食われるのでとんでもないことである・・・
大抵パイロットが食われるのは、VRとの相性が悪すぎた時か、マッチし過ぎて自分が自覚できなかった時に起こる。
だからちょうどいい調整が為されてないVRに同調するのは自殺行為であるし、また、普通のパイロットにはそもそも同調そのものがVRによって拒否される。
したがって今は大佐の言う"特注"という言葉を信ずるより他無い。
機体はアファームドタイプ。
しかしすべての武装が外されており、その容姿はアファームド・ザ・グラップラーに似ていた。
幸か不幸か、思惑通りなのか、そのアファームドはゼーマン大尉を拒否しなかった。
外部スピーカーを使い、大佐に質問するゼーマン大尉
「大佐、武装がダブってるように見えますが、どういう装備なんですか? こいつらは。」
「そいつの頭に聞いてみろ。自分のことは自分がよく知ってる!」
「は?」
「設計図がそいつに記憶されてるってことだ!」
なるほど・・・
同調したゼーマン大尉は自分に問い掛けるように機体に聞いてみた。
「ちょっと待ってください・・・。な!? ほ・本気ですか!? こいつぁ・・・。」
ゼーマン大尉は呼び出した機体データを見て驚愕した。
「だから特注機なんだ。そのデータとおり組み上げろよ。」
スガワ大佐は心なしか楽しそうに見えた。
3.Crimson&Fire−Fox
二機のアファームドが大佐の前に聳え立っていた。
その左胸には機体名のイニシャルが綴られている。
CR、そしてFF。
両方とも既製品のアファームドのどのタイプにも属さない。
大佐いわく、今回のためだけに作られた特注機なのだそうだ。
ご丁寧に一機は自分専用に調整されている・・・。
その武装はあまりにも偏ってるといっても言い。
CRは左腕はストライカーと同タイプのものを、右腕のハードポイントにはグリスユニットの左腕ランチャーが取り付けられており、左肩には砲身を切り詰めたハーフグレネードランチャー、右肩には指向性のレーダーと思わしきものが装備されている。
両手にはバトラーと同じマシンガンが装備されており、背中にはストライカー同様ナイフが装備されていた。
左半身だけを見るなら、マシンガンを余分に装備したストライカーなのだが・・・。
FFは、両腰にロケットブースター、左腕のハードポイントには一回り小さいグレネードランチャーと思わしきもの、右腕には長砲身のグレネードランチャーのような物、そして両肩にはショックアブソーバーを無くした短砲身のグレネードランチャーを逆さに・・・つまり、砲身が背中に向いている状態で装着されている。
さらにロングライフルに見立てた骨董品の120mm砲が一丁。これは左利き用のスナイパーライフルに改造してあった。
砲身を逆に搭載したディスラプターといった感じだが、きわめて奇妙なスタイルだ。
CRの装備も一目で通常でないとわかるが、FFの装備は群を抜いて異常なスタイルだ。
「大佐、こいつでいったい何をやる気ですか?」
「強襲、そして離脱だ。」
ジュン大佐はそう言うとにやりと笑った。
「今晩、ここから5キロ離れた地点を輸送車が通る。無論、警護のVR隊もいるし、近くにVR街道警備隊の詰め所もある。」
「ではその輸送車を・・・」
「そうだ、襲う。」
「質問よろしいですか? なぜ警備隊の詰め所の近くで襲うのです? 何も近くで襲わなくても・・・」
「逃走経路だ。物資強奪を成功させるには、無事に逃走できなければならない。君の疑問はもっともだがな、今回の作戦は逃走経路を基準に練られている。というわけでこれを見ろ。」
大佐は地図を広げて見せた。
「いいか? ここが現在地、ここが襲う場所。でもってな、ここからちょっと進んだところに崖が存在してるのはわかるな? この崖のここのポイントにトンネルがある。」
「そこに逃げ込むのですね? ですがそれでは袋のねずみでは・・・」
「まぁ慌てるな。このトンネルを抜けると、カルデラに出るんだ。実はそのカルデラでな、今夜ローカル戦が行われるんだ。」
「ではそれに紛れようと?」
「それもあるが、戦場の混乱に乗じてこいつらを、機体を隠す。」
「隠すって・・・。」
ゼーマン大尉は絶句した。
「まぁ任せておけ。君はしばらく休むといい。三時間後に作戦会議だ。」
大佐はそう言うとFFの機体を微調整するためかコクピットに乗り込んだ。
4.作戦会議
石を組み上げ、竈を作り、夕飯の支度をする。
大佐によればここで最後の晩餐になるかもしれない食事をしながら作戦会議を行うそうだ。
「なかなかいい竈ができたな、ゼーマン大尉。」
そういいながら大佐は鉄板を竈の上に乗せた。
竈に火をつけ、ゼーマン大尉も鉄板の前に座った。
鉄板が暖まるまで、大尉は気になっていた質問をぶつけてみた。
「大佐、質問よろしいですか?」
「なんだ?」
「今回の作戦の意図はなんです? この作戦を企画した人物は誰なんです?」
「ゼーマン大尉、世の中には知らないことの方がいいこともある。」
「自分はすでに巻き込まれてしまいました。今更驚くことはないかと・・・。」
「そうだな、では言い方を変えよう。もし君が敵方に捕まっても、君が詳細を知らなければ敵も知る術を持たない。」
「・・・了解しました。」
ゼーマン大尉はもっともだと自分を納得させた。だが釈然としないのは事実だ。
「かといって君が捕まることを前提としているわけではないぞ? 万が一の事態に備えてだ。今回の作戦を成功に導くためには君の協力が必要だからな。作戦がほぼ成功だと確信した時に打ち明けよう。それまで君は作戦の意図を知らなくていい。積み荷を無事に強奪することが現時点での何よりも優先されるべき事だからな。」
「つまり全てが終われば全て分かる・・・と?」
大佐は黙ってうなずいた。
「さて、鉄板も暖まったようだし、作戦会議を始めるか。」
そう言うと大佐は食材を手に取った。
「いいか、ここが林だ。」
そう言いながらモヤシをばら撒く大佐。
「ここにお前が潜み、私がここに潜む。」
長箸でモヤシを軽く掻き分けた。
「でもってな、輸送車がここにきたとき、」
ステーキを取り出し、
「おまえがファランクスで輸送車を足止め、」
油を敷き、その上にステーキを乗っけた。油を敷いた直後の為か、えらくいい音で焼ける。
「たぶん警護隊が飛び出すから、もう一度ファランクスを放つ。」
ナスを無造作に放り、再び油を撒く。
「その音にまぎれて私がこいつらを狙撃。」
ナスに爪楊枝を突き刺す。
「すると狙撃した方に向くので、そこでおまえが飛び出し、こいつらの相手をする。」
ナスをゼーマン大尉のほうに移動させる。
「その間に、この私が、輸送車を、いただくと。」
そういうと大佐は、生焼けのステーキにフォークをつきたて、一気にほうばった。
「なるほど・・・って、あああ!!! 肉がぁぁ!!!」
「慌てるなって・・・本物の牛肉だから生でも大丈夫だ。それにレアはなかなかうまいんだ。おまえが警備隊に手間取ってる間に私は輸送車からお荷物を戴き、同時に警護隊の背後を襲う。」
そういうが早いかナスに手を出すスガワ大佐。
それに対し、秋茄子までもは食わせんとばかりに生焼けのナスを奪い取る大尉。
「むぅ・・・まぁいい、ここで連絡を受け、詰め所から増援部隊が来る。」
そういうとザルからキャベツを取り出し放る。
「後はこいつらからうまく逃げれば良い。」
「あの・・・お肉はもうないんですか?」
「当たり前だ。輸送車は一車両だからな。」
大佐ってこんなキャラだったのか・・・と思うゼーマン大尉を他所に、野菜を食うジュン・スガワ大佐(仮)
「なんだ、食わないのか?」
「た・食べますって」
こうして作戦会議は終了した。
5.潜伏
所定のポイントに到着したゼーマン大尉は、改めてこいつをうまく動かせるのかと戸惑っていた。
何しろ武装がおかしい、グリスユニットの左腕ランチャー、こいつから出せる攻撃は小型ミサイルとナパームの類、後は置きミサイルぐらいだ。
マシンガンを装備してるとはいえナパームを両腕に装備することもないだろうに。
聞けば、足回りもバトラーベースで転ばないようにバランス調整のみだという。
いくらグレネードランチャーを短砲身にしたからとはいえ、バランス的にどうかと思うが・・・。
しかし、問題のなのはこの右肩の謎の武器だ。
許可が出るまで使うなって、いったいどんな武器なんだ?
ステルスではないらしいが・・・
とりあえず自分がフォワードで、大佐がバックスなのだそうだ。
シンガリを務めるというのならあの武装は納得できる。
しかし、こちらの機体よりも大佐の機体のほうが謎が多い。
左右の腕に装備されたランチャーはグレネードランチャーではないそうだ。
右ランチャーはリニアガンだそうだし、左ランチャーはプラズマキャノンだそうだ。
メインの武器が無反動砲なら、大佐がフォワードをすればいいのに。
しかし、狙撃用に改造した120mm砲・・・どっから掘り出したものだろう。
他の武器はコードネーム“1103”、通称SATORUという技師が作ったものだそうだが・・・。
なんにせよ、一支部長がこんな代物を作れるはずが無い。何か巨大な・・・。
「大尉、位置に就いたか?」
「位置に就きました、どうぞ。」
「よし、そのまま待機だ。」
「あの、大佐。」
「なんだ?」
「失礼ですが、狙撃の腕の方は・・・?」
「私の腕を疑うのか? 私は神田工務店スナイパー部で二番目の腕を持つ男だぞ。」
「大変失礼しました! VRで狙撃なんて自分はやったこと無いので。それにどの教練プログラムにも無かったので・・・。」
「そりゃそうだろうな。私もVRに乗っての狙撃は初めてだよ。来年度から教練プログラムに追加されるかも知れんぞ?」
「・・・。」
「心配するな、やることは一緒さ。」
大尉は襲撃が成功するかどうか自信が無くなった。
6.事情
輸送車の到着までまだ少し時間がある。
思えば、ここで俺がこんなことしてるなんてなぁ。
本来なら中央で出世コースなのに、何の因果か、任意同行とか言って強制連行され、実験による拘束も終わりかと思えば反逆者に仕立てられるし・・・
大尉はそのときのことを思い出した。
「ごきげんよう、ゼーマン大尉。きっとアクセスしてくれると思ったよ。」
「何てことするんだ! 俺は中央に戻れるはずだったんだぞ!」
「本気でそう思っているのかね?」
「なに?」
「拘束が解除されるならとっくに解除されてるだろう。だのに君が拘束されつづけてるのにはどんな理由があるのかな?」
「それは・・・」
「君は明日、ヒューマニックアカデミーに移送されることになっている。」
「ヒューマニックアカデミー・・・」
「あそこがどんなとこかは知ってるようだな。」
「洗脳施設だな。なぜだ? なぜそんなところに俺が送られる?」
「君は知らないかもしれないが、君はバーチャロン現象で入院ということになっている。つまり、君が実験に参加していること、ましてや実験自体をDNAは知らない。DNAが知っているのはなんらかの調査を行っているということだけだ。そういった状況下で普通に帰されると思うかね?」
「いや、いくら昇進試験に落ちて浪人中の俺でもそれくらいはわかる。」
「そういうことだ。我々が何もしなくても君は無事には済まなかった。」
「俺に何をして欲しいんだ。」
「とりあえず、ストライカーを一機強奪してもらいたい。」
「それでどうする?」
「秋の祭典、XonXは知ってるな? 当然そこで使用される戦場も。その戦場で今度、ローカル戦が開かれる。それに増援部隊としてエントリーしておいた。その戦場でF・グレを披露して欲しい。」
「それだけか?」
「今はそれだけだ。指令は追って連絡する。何か質問は?」
「強奪したストライカーじゃすぐに足がつくぞ。」
「ふむ、いいとこに気がついたな。大丈夫だ、ここの実検は非公式だ。そこで使用された機体も公にはならん・・・だが、君の言うとおり足取りはばれるだろうな。そこで・・・だ。心配ならIDを書き換えろ。コードはここのアクセスコードといっしょだ。もっとも君が追手がかかっても問題ないというほどの剛の者であればその必要はないと思うが。」
声の主はお道化るように静かに笑った。
「胸くそ悪いな。俺は思い通りには動きたくない男なんだ。降りると言ったら?」
「ヒューマニックアカデミーで犬になるんだな。」
「・・・。」
「そうそう、一つ言い忘れてた。この回線が開いた瞬間、あるプログラムが働いてね。通話が終了次第警報が鳴るはずだ。やるなら早い方がいい。決心が鈍るからな。では健闘を祈る。」
「謀ったな! まて、おまえは何者なんだ!」
「謀ったのは今に始まったことじゃないさ、ゼーマン君。恨みを持つ者、とだけ言っとこう・・・」
回線はそこで切れ、同時に収容施設に警報が鳴り響いた。
俺は、道連れとばかりにグラシャル・ホッパー伍長へ手紙を渡し、実験用として徴収されていたストライカーを強奪して逃走した。
そして、ローカル戦に参戦、お望みどおりF・グレを披露した。
どういう処理をして俺の身分を隠し、参戦させてるかは不明だが、一機のみの増援部隊というのもローカル戦じゃ珍しくない。
戦闘中に通信が開き5日後に開かれるローカル戦にも参加せよとの指令が届いた。
悔しいが今はこいつの指令に従うしかない。
5日後、同じように増援部隊として作戦に参加したが、いくらも戦わないうちに通信が強制的に開放され、指令が届いた。
「伍長を道連れにしたのか? 酷い奴だなぁ、君は。」
「はん、どっちが酷いんだか?」
「伍長はヒューマニックアカデミーに収容されることが決定したそうだ。」
「・・・。」
「ところで大尉、君が今戦っているとこから幾ばくかもいかない非戦闘地域にな、とある施設があるのだが、そこを襲撃して欲しい。」
「何の施設だ?」
「ヒューマニックアカデミーだよ。」
「?! こんなところにあるのか!」
「そうだ、あまりの近さに驚いたろう?」
「襲撃するだけでいいのか?」
「いや、とある人物を救出して、後はその人物の補佐に回ってもらいたい。」
「その人物の名は?」
「ジュン・スガワ大佐(仮)だ。ある計画の重要人物でな、ちょっとした手違いで収容されてしまったのだ。」
「独房の場所とかはわかっているのか。」
「データを送信する。」
「周到なことだ。」
ゼーマンは舌打ちをした。
「お褒めに預かり、ふふ。彼が収容されたのは君の脱獄後すぐでね。本来なら君は前回の戦闘時にピックアップされるはずだったのだ。」
「じゃぁ、この戦闘に参加させたのはむしろ救出作戦がメインなんだな?」
「流石は幹部候補生! 気付くのが速い。私が人事部長だったらもっと上に配属させたのだがね。」
「御託は良い!」
「そうだ。イレギュラーだったがね。ま、よろしく頼む。そうそう、送付したデータにコードが付属されてると思うが、そいつを襲撃前に入力してくれたまえ。」
「りょぉ〜かい。」
ゼーマン大尉はやる気のない返事をして戦線を離脱した。
襲撃は成功だった。
だが、大尉は怒っていた。
「あのやろぉ! オートパイロットのコードじゃねぇか!」
襲撃直前に言われたとおり、IDを書き換えたら、ストライカーは大尉をコクピットから射出し、勝手に動き出した。
おかげで陽動作戦となり、無事スガワ大佐を救出することに成功したが・・・。
そして今に至る。
この作戦が終了すれば、全てが分かるというが・・・中央復帰が閉ざされたのだついて行くしかなかろう。
7.砂塵
「大尉、大尉、聞こえるか?」
「聞こえます、どうぞ。」
「砂塵が見えた。もう間もなく輸送車がここを通過する。手はずどおり頼むぞ。警護隊との戦闘はアドリブでかまわん、弾薬は大切にしろよ。以後、無線封鎖」
「了解。」
今回の作戦は、本来ならバックアップが受けられるはずだったが、大佐が更迭されてしまい、バックアップ部隊と連絡が取れないため受けられなくなってしまったそうだ。そのため、あらかじめ用意されていた弾薬でしか攻撃ができない。
弾薬はリアルタイムリバースコンバートで、送り込まれるわけだが、設定された座標に用意された弾薬が尽きた場合、別の弾薬庫に座標が変わるので、通常、弾が尽きることはない。しかし、それら座標変更の作業をするバックアップ班がいないため、今回の作戦は非常にシビアなものになっている。そのため成功させるためには連携をうまくとらないといけない。
輸送車の物と思われる砂塵が近づいてくる。
ゼーマン大尉は手の汗を拭った。
輸送車は目視できるところまで近づいてきた。
もう少し、もう少し、Now!
大尉は潜んだ茂みからファランクスを放ち、輸送車の鼻先に火柱を立てた。
突然の火柱を避けんがために輸送車は道を外れ、木に激突。
大尉はもう一度ファランクスを使用すると飛び出した。
8.強襲
おかしい、警護隊がいない。
ジュン大佐は警戒していた。
一台のはずの輸送車が二台に、そして排除すべき警護隊が随行していない。
ジュン大佐はしばらく様子を見ることにした。
飛び出した大尉はマシンガンを辺りに振り向け、警戒した、が、警護隊がいない。
大尉は拍子抜けしてしまった。
作戦では、大佐がコンテナを強奪することになっていたが、こういた状況ではどうすべきか・・・ここはやはり自分が・・・。
その時、二台めの輸送車のコンテナが開き、中からVRが起き上がった。
大尉は舌打ちをした。
しまった、VRキャリアーだったのか、偽装しやがって、念入りなことだ。
あのタイプは、ノーマルバルバドス?
大尉はバルバドスに向かってグレネードを発射した。
バルバドスはキャリアーからジャンプで空中に逃れ、そのまま空中ダッシュで前進、リングレーザーで応戦。
それを読んでいた大尉は攻撃を避けつつ相手の着地にダッシュマシンガンを合わせた。
バルバドスに吸い込まれていった劣化ウラン弾の弾群は弾かれることなくバルバドスに着弾して爆発した。
体制の崩れたバルに更なる追い討ちとして近接を仕掛けるも、バルはまたもや上空に逃れた。
「メーデー! メーデー!、街道警備隊! 街道警備隊!、こちらラビットワン! 襲撃を受けている! 至急救援を求む!! 繰り返す! 襲撃を受けている! 大至急助けに来てくれ!」
「こちら警備隊、救援隊を出す。現在位置を送ってくれ!」
「ラビットワン、了解! 現在ラブ=ディクノン・イージーを出して応戦してる最中だ。早く頼む!」
「了解。高速機動部隊を急行させる。」
緊急事態発生! 緊急事態発生!
この警報で警備に詰めていた連中は叩き起こされた。
「何だいったい?」
みな、眠気眼をこすりながら戦闘準備に取り掛かる。
警報が鳴った場合、3分で出動準備が完了しなければならない。
夜勤の連中はすでに出撃している。
「今晩輸送車がここを通るって言ってたから、それが襲われたんだろ?」
「ほう、馬鹿な奴らだ、ここの管轄で襲うとわな。我ら紳士連盟が紳士プレイで蹴散らしてやる。」
「まったく持ってそのとおりだ。よし、行くぞ!」
各員、紳士連盟のロゴが入った機体に乗り込む。
「サイファー、スクランブル!、目的地は追って知らせる。」
「了解!」
スピーカーから流れる司令部の指示にに対して応えた3機のサイファーが次々にカタパルトで発進する。
勢いよく射出されたサイファー3機は超高速で突き進む。
「こちら本部。聞こえるか? どうぞ?」
「聞こえます、どうぞ。」
「目的地は12時の方向、12キロ地点の街道だ。」
「12時の方向、12キロ地点の街道・・・って通り過ぎたぞ! 各機旋回! つぉ!」
旋回しようとしたところを撃ち抜かれ、サイファーは墜落した。
耳をつんざくソニックブームとともにサイファーが上空を突き抜けていく。
だが、輸送車の上空で止まらない。
「なんだぁ?」
スガワ大佐はゆっくりと狙いを定め、狙撃した。
この120mm砲、確かに古いが、使用する弾丸は最新式のものだ。Vアーマーに対抗するために弾かれた場合は炸裂し、弾かれなかった場合はそのまま相手を突き抜けて炸裂する、徹甲榴弾とも言うべきものである。その構造は側面に衝撃が加わった場合に信管が破裂するという形式だ。
ともあれ、サイファークラスなら弾かれることなく本来の攻撃力でダメージを与えられる。
直撃を食らったサイファーが錐揉みしながら墜落していく。
大佐は先頭から順次狙撃していった。
二機目も撃墜、三機目は飛行形態を解除したため急に失速、そのため弾道から外れた。
9.強奪
「何やってんだくそぅ! サイファーは二機撃墜された! 他の救援部隊はどうしたぁ!」
「こちら警備隊、増援は間もなく到着する。」
「う、うわぁ!」
輸送車からの通信はそこで途絶えた。
輸送車のコンテナ部を掴んだ大佐は、余計な部分・・・駆動部分を引き剥がし、転がした。
「さて、もう用はないな。」
大尉はバルバドスと戦っている。
いや、はっきりと確認できるあのエンブレムは・・・。
「大尉、そいつはERLを持たないラブ=ディクノン・イージーだ! 練習機ごときに何やっている!」
姿を現した大佐は無線封鎖の意義を失ったためにそれを解除して呼びかけた。
「やっぱりそうだったのか!」
0/19・Ezが横にダッシュしつつリング攻撃を仕掛けてくる。
大尉は軸線が一定になった瞬間を逃さずパンチ特攻を仕掛けた。
「何やってんだ大尉!」
大佐の叱責が飛ぶ。
それもそのはず、バル系の横ダッシュリングは空中補正が強く、しかも全弾食らえば相当なダメージとなる。
大尉は0/19Ezを撃破したものの、大ダメージを被ってしまった。
「すみません、時間がなかったもので」
大尉の言うとおり、輸送車の前方から大砂塵が迫ってきていた。
10.カウンター
「よし、大尉、洞窟へ向かって逃走経路を確保しろ!」
「経路の確保って?」
その時二機のサイファーが低空で崖の方に向かって飛んでいった。
「先ほど三機のサイファーのうち一機を逃した。奴が上で偵察している。逃走経路の割り出しなんざ朝飯前だろうよ。」
「あ、あいつか・・・」
遥か高空に一機のサイファーが旋回している。
「意外に早かったな・・・。」
「は!?」
なんと、まだ到着しないと踏んでいた警備隊が到着したのだった。
「大尉、私が奴らの足止めをする。その間に赤のグレネードの準備にかかれ!」
「赤のグレネードって?」
「置きグレを大量に消費する奴だ! 来るぞ!」
「大佐、退がって!」
スガワ大佐が後退した地点にファランクスの火柱が立ち、続いてナパームが走る。
火柱が立つ直前に大佐は敵部隊を視認した。
スペシネフ二機とバトラーが六機、砂塵が後方にまだ続いていたので重量級が後続部隊にいるのだろう。
「参ったな、敵さん怒らしちまったようだ。紳士連盟だったとはな。」
大佐(仮)はそう言うと爆炎の途絶えた瞬間を狙ってスペシネフを狙撃した。
直撃を食らったスペシネフは体を二分して吹き飛ぶ。
「ははは、どうだ! 120mm砲の威力はぁ!」
右手が塞がっている為、反動を抑えきれず盛大な硬直を見せる大佐。
逃がさんとばかりに一斉にバトラーたちが動き出す。
「『紳士的に撲殺隊』、『紳士的に撲殺隊』、こちら『紳士的に高みの見物隊』だ。どうぞ。」
「こちら『撲殺隊』だ、なんだ?」
「コンテナの中身はできれば無傷で取り返して欲しいと先方が言ってきている。中身は書類だそうだ。ってことで火気厳禁。どうぞ。」
「了解。先方に伝えてくれ、当方あまり無茶な要求には従えない・・・とな。」
「了解。伝えておこう、うぉ!」
サイファーは突然飛来した置きグレをギリギリで避けた。
直後置きグレが一定間隔で飛行形態のサイファーに襲い掛かる。
F・グレの準備をする大尉は、そのロックをサイファーに設定していたのだ。
11.飛来! 炎のグレネード!
スガワ大佐は一斉に向かってくるバトラーに対処するため、プラズマキャノンから大光球を作り出した。
バトラーは見たことのない攻撃に対して、むやみに突っ込むのをやめ、様子見のためにスペシネフが鎌を放った。
大光球に鎌が直撃した瞬間、大光球は大爆発を起こした。
バトラーはその爆風と閃光に、瞬間怯んだ。
大佐は一瞬の隙を逃さず、一機のバトラーに近寄り、120mm砲を0距離発射した。
装甲の厚いバトラーも、これには堪らず吹き飛ぶ。
同時にスペシネフに対してリニアガンを連射、慌てて避けるスペシネフ、だが羽に被弾した榴弾が爆発し、体勢を崩し倒れる。
倒れこんだところを榴弾が連続ヒットし、スペシネフ沈黙。
我に返ったバトラー五機が一斉にマシンガンを放つ。
マシンガンの一斉射撃を避けきれず、大佐は転倒。
「貰ったー!」
「よっしゃぁー!」
ここぞとばかりにバトラー二機が迫る!
が、このときバトラーのパイロットたちを予期せぬ事態が襲った。
スピーカーから突然異常なノイズが出たのである。
言わずもがなF・グレ現象である。
突然統制を失い、二機のバトラーが激突し転倒した。
「大尉、準備できたか!」
「何とか間に合ったようで」
「よし、赤のグレネードをご馳走してやれ。」
大尉は爆裂グレネードをバトラーたちに見舞った。
「なにごとだぁ!」
「くそぅなにも聞こえん!」
「なんだあれはぁ!」
三機のバトラーは方々に散る。
彼らのモニターには見たことのないファイアーグレネードが写ったのだから驚くのは無理もない。
転倒したバトラー二機にそのグレネードは直撃、大火球が展開された。
その威力を見てますます驚く『紳士的に撲殺隊』の残存機。
実際はただの爆裂グレネードなのだが彼らには以降全てのグレネードがファイアーグレネードと写るのでノーマルグレネードとの区別が付かない。そのためこの効果は大きい。
「何だあのグレネードは? 本部、本部、こちら『紳士的に高みの見物隊』、画像見えてるな。」
「こちら本部、ああ、見えている。敵さん侮れないようだな。ただのストライカーベースの改造機とは違うようだ。そちらからも見えてると思うが、もうじき『紳士的に弾幕隊』が到着する。」
「『紳士的に高みの見物隊』、確認した。」
後続部隊がもうすぐ到着する。
12.俺だったらあそこに・・・
体勢を立て直したスガワ大佐は、大尉に分裂グレネードを撃つように指示、同時に目算を開始した。
もうすぐ、後続隊が到着する。これだけタイムラグがあるということは遠距離支援攻撃機ということか・・・紳士連盟とは言え警備隊に従属してる奴らだ。流石にライデンは持っていまい。
かといってドルドレイならばこんなに到着が遅れる事もなかろう・・・ということはグリスヴォックか。
グリスヴォックが展開する場所といえば・・・そう、俺だったらあそこに。
砂塵から察するに距離は800メートル、展開の時間を考えて・・・
「そこだぁ!!!」
(仮)大佐は120mm砲を上空に向けて全弾連続発射した。
上空を旋回していたサイファーが射軸をずらしつつさらに高度を上げる。
「そんな攻撃に当たるか!」
流石に完全に見られてるため、サイファーには当たらない。
だが、大佐の狙いは別にあった。
地球上に存在する以上、特殊な推力を持たない物質は全て引力に引かれる・・・弾丸も例外ではない。
運動エネルギーがすべて位置エネルギーに変換された後、再びそのエネルギーは運動エネルギーへともどる、地上に向けて。
バトラー達を再び異常音が襲う。
彼らはヘルメットをしているからこそ、超音波攻撃による支障はないが、その間は連絡不能だし、何より異常なグレネードが飛来してきてるのは視認できる。
また、その異常音によって彼らは120mm砲を撃つ大佐を音で判断することができなかった。
グレネードの回避行動をしつつ大佐の行動に気づいた一機がトンファーで攻撃に移る。
そのバトラーは完全にグレネードを避けたと思っていたのだが、グレネードは途中で分裂、子弾がバトラーを襲った。
他のバトラーは分裂弾に気づいたが、異常音のため、連絡ができず、仲間が分裂弾をもろに食らうのを指を咥えて見ているしかなかった。
13.離脱
「ゼーマン大尉!、ここはもういい、今度こそ退路を確保してくれ。」
「了解!」
大尉が反転、置き土産とばかりに置きぐれを設置して一路崖に向けて逃走を開始した。
「なめるなぁ!!」
逃走する大尉に激怒したバトラー二機は的を大佐に絞り一機がマシンガンでを牽制、もう一機が近接を仕掛けた。
異常音が襲っていたが、関係ない。
スガワ大佐は後方にダッシュしたが、間にあうはずがない。が、しかし、
「リンボーダンスは得意か?」
大佐はそう言うと120mm砲を横にしてバトラーに向かって投げた。
「!?」
バトラーはそのまま120mm砲を胸で受けた。
「それが何だといグッ!!」
120mm砲はその長さから木に遣え、バトラーの動きを止めた。
バトラーは近接モーションで高速機動に入ってたので、木は流石にそれを止めることはできずに折れたが、その衝撃は相当なものであった。
バトラー自体の外傷はたいしたことないが、パイロットが失神したためその行動を停止した。
「こちら『紳士的に高みの見物隊』! 『紳士的に撲殺隊』は壊滅! このままでは追撃が厳しくなる!」
「『紳士的に高みの見物隊』、追撃隊の増援部隊は出した。『お洒落な紳士隊』を誘導してやってくれ。」
「了解。」
サイファーは森林の中を突き進む、『お洒落な紳士隊』を発見するとそこに急行した。
撲殺隊の生き残りは優秀だった。
大佐の後ろにぴたりとくっついて追いすがってくる。
そのため、大佐は気が抜けない状況となっていた。
「大佐ぁ! 距離がどんどん離れてますが大丈夫ですかぁ?」
「心配するな、お前はどんどん突き進め。」
「了解・・・あ!?」
その時大尉は、左舷後方より大量のVR反応を認めた。
「大佐!、左舷後方、この速度で行くと私と大佐の間に敵VR郡が展開されてしまいます!」
「なにぃ!? 分断されるのはまずい! まずいぞぉ!」
くそ! どうする! どうすれば!
「大尉! グリスランチャーのターボナパームを左舷に放て! 陽動作戦だ!」
「サイファーが上から見てて効き目はないかと」
「そいつはこちらで何とかする!」
「了解!」
すぐさま大佐は大尉の上空、そしてサイファーのいるであろう付近めがけて2発のプラズマボールを射出。
微妙に速度を落としたところにバトラーが差し迫ったが、右腕のリニアガンで牽制して再び距離をとる。
「なんだ!? くそ、見えない!」
「『紳士的に高みの見物隊』、大丈夫だ、我々は着実に目標に迫っている。」
「ならいいが・・・。」
サイファーは下方に展開した二つのプラズマボールの爆風を見ながら上昇した。
14.ラグ
「こちらグリスヴォック部隊、展開完了した。相手のおおよその距離を知らせたし!」
「了解。おおよそ1キロだ。」
「了解、斉射する。弾かれる可能性が高いが足止めをするには十分だろう。」
「頼む。」
輸送車の前に展開したグリスヴォック6機のうち、3機が上空に飛んだ。
上空に飛んだグリスヴォックがミサイルラックを全開にした時、上空から榴弾が襲った。
「なんだ!」
「退避しろ!」
上空のグリスは急な退避行動をしたため、狙った場所がバラバラになり、文字どおり36発の小型ミサイルが拡散発射された。
地上に着弾した榴弾が炸裂する。
「うわぁ!」
地上でMRBMを射出体勢に入っていたグリスヴォック3機のうち1機は無事に射出、しかし、1機が不幸にも直撃を受け、MRBMが暴発。残る一機は榴弾の炸裂の煽りを受けて転倒、それによりMRBMが水平射出され、程なく地面に着弾して爆発した。
「敵襲! 敵襲! 各機散開せよ!」
「高みの見物隊! 敵の確認を!」
「そんな馬鹿な! 敵が居るはずが無い!」
「しかし現に砲撃を受けたぞ!」
サイファーは後方に上がるキノコ曇をみた。
「そんなはずは・・・!? まさか!!!」
「どうした?」
「先ほど敵の一機がライフルを上空に無駄討ちしていたが、ひょっとしたらそれが・・・」
「そんな馬鹿な!」
「しかし今ごろ増援があらわれるなどと・・・」
「もういい、我々で何とかする!」
弾幕隊は通信を切ると、当たりにナパームを撒き散らし出した。
その時サイファーの下方、お洒落隊の鼻先でナパームが炸裂した。
「なにごとだぁ!」
「奇襲か!?」
「うぉ!」
置きグレを食らい、転倒するバトラー。
「気をつけろ! ミサイルが」
さらにお洒落隊に迷走するミサイルの大群が襲う。
「どこに敵が!」
サイファーが敵を探そうとした時、再びプラズマボールが炸裂して視界を奪った。
「くそぅ! 敵の向かってる場所は分かっている。俺は先に急行する!」
15.お洒落隊
「大佐ぁ! なんとか分断されずに済みそうです。」
「そいつぁ良かった! だが私は今それどころじゃない!」
スガワ大佐は今、ミサイルを避けるのに必死になっていた。
一発被弾・・・だがVアーマーが弾いてくれた。それにちょっと体勢が崩れただけで転倒もしなかった。
追いすがっていたバトラーはミサイルを食らい不幸にも転倒していたが・・・
直後スガワ大佐の真後ろにお洒落部隊が出現した。
「くぅ! 間一髪だぜぃ!」
スガワ大佐は間一髪でゼーマン大尉と分断されずにすんだのだ。
一方お洒落部隊はスガワ大佐に肉薄しており、このままスガワ大佐が餌食になるのは時間の問題かと思われた。
「標的を捕捉。おい、こいつの主砲・・・後ろに向いてるが・・・こんなのは見たことがないぞ。」
「全機警戒しろ。」
「とりあえずやつを転倒させれば我々の勝ちだ!」
「お洒落部隊!」
「撲殺隊、なにかな?」
「俺はやつのケツにずっとへばり付いていたが、一発も撃たれなかったぜ?」
「なるほど・・・ハッタリか。散々愚弄されたんだ、思う存分タコ殴りだ!」
お洒落部隊、相手がストライカーベースだと聞いて、その構成はコマンダー1機にバトラー6機である。
2機のバトラーがマシンガンで大佐の進路を牽制、別のバトラー2機がトンファーを叩き込む機会を窺っている。
焦る大佐。
「くそぅ、やるしかないのか! しかしこいつは・・・」
そこへマチェットが突き刺さった!
「ビンゴ!」
「やったぜ隊長!」
コマンダーの支援攻撃を食らい、マチェットが刺さって速度の落ちた大佐機に、これを好機と取った2機のバトラーが迫る!
16へ
目次へ