第一章: ファイアーグレネード

DNAからは書面で、RNAからは公式回線で口頭で抗議を受けた。
これにより、国際戦争公司は戦闘の公平性を否定する由々しき問題として、そして自らの保身のため査察に踏み切った。どちらが先にSTを改造したかは問題ではなかった。
公司が問題としたのは、攻撃があたらずともパイロットを粉砕できる武装という点であり、これは大幅にエンターテイメント性に欠ける。ましてや公式戦でそんなことが行われてはならない。無論、パイロットを直接攻撃する兵器はその使用を禁止している。だが、公司側が所有する資料ではそのような兵器が使用された形跡はなかった。
とはいえこのまま何もしなかった場合、確実に公司からDNA・RNA両陣営が決裂してしまう。
幸いにも両陣営から証拠資料が送られてきている。それを理由に両陣営の査察を行ったのだ。
しかし、必死の調査にもかかわらず両軍の保有するSTには異常が発見されなかった。
念のため、問題が起きた日に使用されていた司令所を原因が判明するまで凍結。該当する当日の戦闘資料を多数押収した。
にもかかわらず原因は不明。しかも、再度その異常報告が両軍より報告された。
両軍とも改造疑惑を否定し、お互いに証拠を偽造したと言い張り埒があかない。
そのため、再度異常報告を受けた際に速やかに搭乗していたパイロットの身柄を拘束した。
監査部はこのパイロットを軸に調査隊を編成。
身柄を拘束されたのは元バルパイロットでようやく中央に復帰したDNA所属のゼーマン大尉であった。
当パイロットの拘束は、混乱が広がらぬよう表向きはバーチャロン現象による入院ということで処理されているが、本人には原因解明までと言う条件付で任意同行と言う形で拘束した。
調査隊の存在は秘密だが、その調査を行っている事自体は両陣営に打診された。
公司側は異常現象の原因が判明するまではSTの参戦は他のVRよりも参戦料を高額に設定し、例の異常現象で被害が出た場合はここから見舞金を捻出するという方法をとった。
監査部はSTのこの異常弾現象を便宜上ファイヤーグレネードと名付け、調査隊の呼称をF・グレ究明隊とした。
以下は調査隊の日誌である。


調査日誌